Any Gibbs measure on infinite-dimensional space defines a regular Dirichlet form with local property on compact space. (Japanese)
Abstract
We show that any Gibbs measure on infinite-dimensional space defines a regular Dirichlet form with local property on compact space.
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See discussions, stats, and author profiles for this publication at: https://www.researchgate.net/publication/362790529 無限次元空間上のGibbs測度は、コンパクト空間上の局所性をもつ正則Dirichlet形式 を定める。 Preprint · August 2022 DOI: 10.13140/RG.2.2.13425.56163 CITATIONS 0 1 author: Hiroki Yagisita Kyoto Sangyo University 26 PUBLICATIONS26 CITATIONS SEE PROFILE All content following this page was uploaded by Hiroki Yagisita on 19 August 2022. The user has requested enhancement of the downloaded file.
無限次元空間R∞上のGibbs測度は、 コンパクト空間(R∪{∞})∞上の 局所性をもつ正則Dirichlet 形式を定める。 Any Gibbs measure on infinite-dimensional space R∞defines a regular Dirichlet form with local property on compact space (R∪{∞})∞. Hiroki Yagisita (Kyoto Sangyo University) 本原稿では、R∞上の Gibbs 測度 µに対して、形式的に Eµ CD(f1, f2) := X k∈NZR∞ ∂f1 ∂xk ∂f2 ∂xk dµ と表記される古典的対称形式について考察する。本原稿のポイントは2つ、 ある。 1つは、表題の通り、加算無限直積位相空間 R∞=Qk∈NRを埋め込む コンパクト空間として、(R∞の1点コンパクト化空間 R∞∪ {∞} ではな く、)Rの1点コンパクト化空間 R∪{∞}の加算直積位相空間(R∪{∞})∞= Qk∈N(R∪{∞})を採用することである。 もう1つは、Gibbs測度の定義として、例えば、Albeverio, Kondratiev, Rockner などに倣い、部分積分公式の成立によるものを採用することである。 破格ではあるが、ここで、正確な定義を述べる。CF∞({R}k∈N)で、以下の 条件を満たす(R∪{∞})∞上の実数値連続関数fの全体の集合を表す。ある n∈N,g∈C∞(Rn), L∈(0,+∞)が存在して、 (1) 任意の k∈ {1,2,··· , n}, (x1, x2,··· , xn)∈Rnに対して、 |xk| ≥ L=⇒∂g ∂xk (x1, x2,··· , xn) = 0, (2) 任意の {xl}l∈N∈R∞に対して、 f({xl}l∈N) = g(x1, x2,··· , xn) である。CF∞({R}k∈N)を「準備段階の対称形式」の定義域として採用する。 1
さて、Gibbs 測度の定義であるが、µを直積位相空間 R∞(の位相的 σ加法 族)上の確率測度とする。任意の n∈NとRnの空でない開集合 Gに対して、 µ(G×R∞)>0であるとする。このとき、µがGibbs 測度であるとは、R∞ 上の実数値(Borel)可測関数のある列 {Hk}k∈Nが存在して、任意の k∈N に対して、次を満たすことである、と定義する。 (1) 任意の f∈CF∞({R}k∈N)に対して、 ZR∞ Hk ∂f ∂xk 2 dµ < +∞, (2) 任意の f1, f2∈CF∞({R}k∈N)に対して、 ZR∞ ∂ ∂xk∂f1 ∂xk f2dµ = 2 ZR∞ Hk∂f1 ∂xk f2dµ である。この条件 (部分積分公式の成立、あるいは、µが対数微分可能である ことと言っても良いのかもしれない)は、「準備段階の対称形式」の可閉性を 保証するために、我々は主に使用する。というより、実際には、CF∞({R}k∈N) を定義域に採用した場合について、「部分積分公式を用いた可閉性の証明を 整理すると、このような条件になっている」というだけのことである。例え ば、Cauchy 分布は平均が存在しない確率分布であるが、その加算無限直積 分布 Y k∈N σk πσk2+ (xk−ak)2dxk! は、(我々の言う)Gibbs 測度であることを確認することは、(第3節の末尾 で示すようにfと同様に R∞上で ∂f ∂xk,∂2f ∂x2 k は有界であるので)難しくはない。 「空間的に大きく広がっている」という点でかなり限界的な確率測度も(我々の 言う)Gibbs 測度に含まれているのではないか、と思われる。我々の主結果で ある「局所性をもつ正則 Dirichlet 形式を定める」において、「µが(我々の 言う)Gibbs 測度である」ということ以外の制約はない。従って、「技術的 には、この点に、我々の方法の利点がある」と若干の期待が持てるところ ではあるのかもしれない。さらに言えば、主結果の前段階の結果として、 Gibbs 測度であるという仮定なしに「可閉であれば、その閉包は、局所性を もつ正則 Dirichlet 形式である」という形の結果を得る。(因みに、Gibbs 測 度の部分積分公式による特徴付けは早くから認識されていたことが例えば、 Frohlich などから覗えるようである。一方、確率測度に対して、部分積分 公式の成立を H-偏微分の可閉性に結び付ける議論を行ったのは Albeverio, Kusuoka, Rockner であろうか?) 2
全体を通して、(学部で学ぶことも充分にあり得るような)解析学の基礎 知識だけが必要である。例えば、我々は、(福島に従って)Dirichlet 形式の定 義を明示的に述べるであろう。従って、Dirichlet形式の定義を知らない方でも 本原稿をお読みいただくことが可能である。実際、「本原稿を書くために、私 はDirichlet 形式の定義(だけ?)を学んだ」というのが実情である。今回の問 題に形式的に対応する確率微分方程式はdXk=√2dBk−2Hkdt (k∈N)であ るが、Hkの定義域(の共通集合)が狭い場合を想定すると、「任意の n∈N とRnの空でない開集合 Gに対して、µ(G×R∞)>0である」という仮定を 外すことが重要かもしれない。私自身は(一般化された?)Dirichlet 形式の ことが何も分からないので、この方向の一般化は手に余ると感じている。ま た、今回は基礎空間 Rの拡張 R∪{∞}による正則化を行った、と言っても 良いのかもしれないが、例えば、完備でない1次元 Riemann 多様体 (0,1) の 拡張 (0,1)∪{∞}による正則化と [0,1] による正則化では適合する対称拡散過 程に本質的な違い(一般化された法線微分の違い?)がある、と思われる。 それに対し、(Rのように)基礎の状態空間が完備な Riemann 多様体(の 加算直積)であれば拡張に依存した違いはないか、どうか?、という問題が 考えられると思われるが、Martin 境界の定義も知らない私にはよく分からな い。「理想境界に到達しなければ同値であること」と「理想境界に到達しな い(容量0である?)こと」を示せば良いのかもしれない。これに関連して、 本原稿の主結果によって定められる正則 Dirichlet 形式に関しては、理想境界 ((R∪{∞})∞)\(R∞)の容量が0であることを示すのは難しくないと思われ る(容量の加算劣加法性と当該の理想境界は「1次元的な境界(余次元1の 境界面)」の加算和であること、及び、「1次元的な境界」の容量に関しては、 2つの切断関数の形状を固定し、その位置をそれぞれ ±∞に近づけること)。 Albeverio, Kondratiev, Rockner, Ergodicity of L2-Semigroups and Extremality of Gibbs States, Journal of Functional Analysis, 144 (1997), 394-423 Albeverio, Kusuoka, Rockner, On Partial Integration in Infinite-Dimensional Space and Applications to Dirichlet Forms, Journal of the London Mathematical Society, 42 (1990), 122-136 Frohlich, Schwinger Functions and Their Generating Functionals, Advances in Mathematics, 23 (1977), 119-180 福島正俊『ディリクレ形式とマルコフ過程』(紀伊国屋書店) 無限次元空間上の Laplace 作用素の変分法的定式化と自己共役性 https://www.researchgate.net/publication/361136526 無限次元干渉 Brown 運動に関する解析的半群 https://www.researchgate.net/publication/361779645 3
1基本的な事項 本節では、(Dirichlet形式以外の)基本的な事項を(証明付きで)まとめる。 こういった基本的な事項にあまり拘泥されない向きは、本節は、飛ばして しまって良いだろう、と思われる。あるいは、逆に、「こういったことは頭に 入っている」という方も当然、飛ばされるのが良いであろう。中間的なタイ プの方が、「確認したくなったとき」に有用であろう、と思っている。Dirichlet 形式の基本的な事項(ただし、本原稿で必要なものに限る)は、次節にまと める。 まずは、本原稿で必要となる範囲で(可測空間と位相空間に関する)抽象 的な一般論をまとめる。難しい議論は特にないのだが、一方、その結論は自 明という訳でもないので、労を厭わず、念のための確認をしている。大概は、 特段の仮定なしに、期待通りの結論が成立するのであるが、ごく一部、適当 な仮定が必要なものがある。より具体的には、「直積位相空間の Borel 集合は、 Borel 可測空間の直積可測空間の可測集合である」は一般には成立しないた め、成立のための(よく知られた)十分条件を与えるであろう。(成立する場 合には、有限直積測度、直積確率測度や Kolmogorov の拡張定理による確率測 度などが Borel 測度になる。)この十分条件は、(R∪{∞})∞の場合と R∞の 場合のそれぞれについて、直積位相空間の Borel 可測空間と Borel 可測空間 の直積可測空間の(よく知られた)同値性を本節で示す(命題24)ために、 使われるであろう。直前で注意したように、このような同値性は一般には成 立しないことがよく知られている。 補題1:Xを集合とする。このとき、{Bλ}λがX上の σ加法族の族であ るならば、∩λBλはX上の σ加法族である。{Tλ}λがX上の位相の族である ならば、∩λTλはX上の位相である。 証明: 容易である。 ■ 補題2:Xを集合、AをXの集合族とする。このとき、ある Bが一意に 存在して、BはAを含む最小の X上の σ加法族である。ある Tが一意に存 在して、TはAを含む最小の X上の位相である。 証明: 2XはAを含む σ加法族であり、位相である。よって、補題1よ り、容易である。 ■ 補題2より、次のように定義する。 定義3:Xを集合、AをXの集合族とする。このとき、Aを含む最小の X上の σ加法族を Aで生成される σ加法族と言う(また、用語を濫用して、 生成される可測空間などとも言う)。Aを含む最小の X上の位相を Aで生 成される位相と言う(また、用語を濫用して、生成される位相空間などとも 言う)。 ■ 4
補題4:X, Y を集合、fをXから Yへの写像とする。このとき、Nが Yの集合族であるならば、「ある C∈Nが存在して、D=f−1(C)」となる 集合 Dの全体の集合は Xの集合族である。BがY上の σ加法族であるなら ば、「ある E∈Bが存在して、F=f−1(E)」となる集合 Fの全体の集合は X上の σ加法族である。TがY上の位相であるならば、「ある O∈Tが存在 して、P=f−1(O)」となる集合 Pの全体の集合は X上の位相である。 証明: 容易である。 ■ 補題4より、次のように定義する。 定義5:X, Y を集合、fをXから Yへの写像とする。このとき、Yの集 合族 Nに対して、「ある C∈Nが存在して、D=f−1(C)」となる集合 Dの 全体の集合を(Nから)fによって誘導される集合族と言う。Y上の σ加法 族Bに対して、「ある E∈Bが存在して、F=f−1(E)」となる集合 Fの全 体の集合を(Bから)fによって誘導される σ加法族と言う。Y上の位相 T に対して、「ある O∈Tが存在して、P=f−1(O)」となる集合 Pの全体の 集合を(Tから)fによって誘導される位相と言う。 ■ 定義6:Yを集合、XをYの部分集合とする。Yが可測空間であるとき、 「Xから Yへの標準的な単射」によって誘導される可測空間を(Yの)部分 可測空間と言う。Yが位相空間であるとき、「Xから Yへの標準的な単射」 によって誘導される位相空間を(Yの)部分位相空間と言う。 ■ さて、自明な事実の確認ばかりが続いたところであるが、次は非自明な (よく知られた)事実であろう。 命題7:X, Y を集合、fをXから Yへの写像、NをYの集合族とする。 このとき、「Nで生成される σ加法族」から fによって誘導される σ加法族 は、「(Nから)fによって誘導される集合族」で生成される σ加法族である。 「Nで生成される位相」から fによって誘導される位相は、「(Nから)fに よって誘導される集合族」で生成される位相である。 証明: 「(Nから)fによって誘導される集合族」で生成される σ加法 族は、「Nで生成される σ加法族」から fによって誘導される σ加法族の部 分集合であることは、容易である。逆を示す。「Yの部分集合 Eで、f−1(E) が「(Nから)fによって誘導される集合族」で生成される σ加法族に属する もの」の全体の集合を BYとおく。BYは、σ加法族である。Nは、BYの部 分集合である。「Nで生成される σ加法族」は、BYの部分集合である。「N で生成される σ加法族」から fによって誘導される σ加法族は、BYから f によって誘導される σ加法族の部分集合である。一方、BYから fによって 誘導される σ加法族は、「(Nから)fによって誘導される集合族」で生成さ れる σ加法族の部分集合である。「Nで生成される σ加法族」から fによっ て誘導される σ加法族は、「(Nから)fによって誘導される集合族」で生成 される σ加法族の部分集合である。 5
位相についても、同様に確認される。 ■ 命題7を標準的な単射に適用して、(さらに、定義3と定義6における用 語の濫用を伴って、)次を得る。 補題8:Yを集合、NをYの集合族、XをYの部分集合とする。このと き、「Nで生成される可測空間」の部分可測空間は、「(Nから)Xから Yへ の標準的な単射によって誘導される集合族」で生成される可測空間である。 「Nで生成される位相空間」の部分位相空間は、「(Nから)Xから Yへの標 準的な単射によって誘導される集合族」で生成される位相空間である。 証明: 命題7から、容易である。 ■ 補題8(の前半)を位相に適用して、次を得る。 命題9:任意の位相空間とその部分集合に対して、「位相空間で生成される 可測空間」の部分可測空間は、「位相空間の部分位相空間」で生成される可測空 間である。すなわち、(位相空間で生成される可測空間を Borel 可測空間と 言うとして、)Borel 可測空間の部分可測空間は、部分位相空間の Borel 可測 空間である。 証明: 補題8(の前半)で集合族を位相として、容易である。 ■ 補題10:X, Y, Z を集合、fをXから Yへの写像、gをYから Zへの 写像、NをZの集合族とする。このとき、「(Nから)gによって誘導される 集合族」から fによって誘導される集合族は、(Nから)g◦fによって誘導 される集合族である。 証明: 容易である。 ■ 補題11:X, Y を集合、fをXから Yへの写像、{Nλ}λをYの集合族 の族とする。このとき、「ある λが存在して、Nλの要素である」ような集合 の全体の集合から fによって誘導される集合族は、「ある λが存在して、Nλ から fによって誘導される集合族の要素である」ような集合の全体の集合で ある。 証明: 容易である。 ■ 定義12:{Xλ}λを空でない集合の族とする。このとき、各 λに対し、prλ で、QτXτから Xλへの射影(標準的な全射)を表す。 ■ 定義13:{Xλ}λを空でない可測空間の族とする。このとき、「ある λが 存在して、射影 prλによって誘導される可測空間の可測集合である」ような 集合の全体の集合で生成される可測空間を({Xλ}λの)直積可測空間と言う。 ■ 命題14:{Yλ}λを空でない可測空間の族とする。{Xλ}λを空でない集合 の族とし、任意の λに対して、XλはYλの部分集合であるとする。このとき、 直積可測空間 QλYλの部分可測空間 QλXλは、(空でない)部分可測空間の 族{Xλ}λの直積可測空間 QλXλである。 6
証明: 直積集合 QλXλから直積集合 QλYλへの標準的な単射を iで表 す。各 λに対して、Xλから Yλへの標準的な単射を iλで、直積集合 QτXτか らXλへの射影を prX,λ で、直積集合 QτYτから Yλへの射影を prY,λ で、可測 空間 Yλの可測集合族を Bλで表す。補題8より、直積可測空間 QλYλの部分 可測空間 QλXλの可測集合族は、「ある λが存在して、Bλから prY,λ によっ て誘導される集合族の要素である」ような集合の全体の集合から iによって 誘導される集合族で生成される σ加法族である。よって、補題11より、直 積可測空間 QλYλの部分可測空間 QλXλの可測集合族は、「ある λが存在し て、Bλから prY,λ によって誘導される集合族から iによって誘導される集合 族の要素である」ような集合の全体の集合から生成される σ加法族である。 よって、任意の λに対して、prY,λ ◦i=iλ◦prX,λ であるので、補題10より、 直積可測空間 QλYλの部分可測空間 QλXλの可測集合族は、「ある λが存在 して、Bλから iλによって誘導される集合族から prX,λ によって誘導される集 合族の要素である」ような集合の全体の集合から生成される σ加法族、すな わち、部分可測空間の族 {Xλ}λの直積可測空間 QλXλの可測集合族である。 ■ 定義15:{Xλ}λを空でない位相空間の族とする。このとき、「ある λが 存在して、射影 prλによって誘導される位相空間の開集合である」ような集 合の全体の集合で生成される位相空間を({Xλ}λの)直積位相空間と言う。 ■ 命題16:{Yλ}λを空でない位相空間の族とする。{Xλ}λを空でない集合 の族とし、任意の λに対して、XλはYλの部分集合であるとする。このとき、 直積位相空間 QλYλの部分位相空間 QλXλは、(空でない)部分位相空間の 族{Xλ}λの直積位相空間 QλXλである。 証明: 命題14の証明と同様にして、確認できる。 ■ 補題17:Xを集合、{Sλ}λをXの集合族の族とする。このとき、「ある λが存在して、Sλで生成される σ加法族の要素である」ような集合の全体の 集合で生成される σ加法族は、「ある λが存在して、Sλの要素である」よう な集合の全体の集合で生成される σ加法族である。「ある λが存在して、Sλ で生成される位相の要素である」ような集合の全体の集合で生成される位相 は、「ある λが存在して、Sλの要素である」ような集合の全体の集合で生成 される位相である。 証明: 「ある λが存在して、Sλの要素である」ような集合の全体の集 合で生成される σ加法族は、「ある λが存在して、Sλで生成される σ加法族 の要素である」ような集合の全体の集合で生成される σ加法族の部分集合で ある。逆を示す。任意の λに対して、Sλは「ある λが存在して、Sλの要素で ある」ような集合の全体の集合の部分集合である。よって、任意の λに対し て、Sλで生成される σ加法族は「ある λが存在して、Sλの要素である」よう 7
な集合の全体の集合で生成される σ加法族の部分集合である。よって、「あ るλが存在して、Sλで生成される σ加法族の要素である」ような集合の全体 の集合は、「ある λが存在して、Sλの要素である」ような集合の全体の集合 で生成される σ加法族の部分集合である。よって、「ある λが存在して、Sλ で生成される σ加法族の要素である」ような集合の全体の集合で生成される σ加法族は、「ある λが存在して、Sλの要素である」ような集合の全体の集 合で生成される σ加法族の部分集合である。 位相についても、同様に確認される。 ■ 補題18:{Xλ}λを空でない可測空間の族とし、{Sλ}λを族とする。任意 のλに対して、SλはXλの集合族であり、Xλの可測集合族は Sλで生成され るσ加法族であるとする。このとき、直積可測空間 QλXλの可測集合族は、 「ある λが存在して、Sλから射影 prλによって誘導される集合族の元である」 ような集合の全体の集合で生成される σ加法族である。 証明: 命題7より、直積可測空間 QλXλの可測集合族は、「ある λが存 在して、Sλから射影 prλによって誘導される集合族で生成される σ加法族の 元である」ような集合の全体の集合で生成される σ加法族である。よって、 補題17より、直積可測空間 QλXλの可測集合族は、「ある λが存在して、 Sλから射影 prλによって誘導される集合族の元である」ような集合の全体の 集合で生成される σ加法族である。 ■ 補題19:{Xλ}λを空でない位相空間の族とし、{Sλ}λを族とする。任意 のλに対して、SλはXλの集合族であり、Xλの位相は Sλで生成される位相 であるとする。このとき、直積位相空間 QλXλの位相は、「ある λが存在し て、Sλから射影 prλによって誘導される集合族の元である」ような集合の全 体の集合で生成される位相である。 証明: 補題18の証明と同様にして、確認される。 ■ 命題20:{Xλ}λを空でない集合の族、{Sλ}λを族とし、任意の λに対し て、SλはXλの集合族であるとする。さらに、任意の λに対して、Xλは、Sλ で生成される可測空間であり、また、Sλで生成される位相空間である、とす る。このとき、直積可測空間 QλXλの可測集合は、直積位相空間 QλXλで 生成される可測空間の可測集合である。 証明: 補題18より、容易である。 ■ 既に注意したように、「命題20の逆は、一般には成立しない」ことがよく 知られている訳であるが、成立のための十分条件を与えるための準備をする。 命題21:Xを集合、NをXの集合族、OをXの部分集合とする。こ のとき、OがNで生成される位相の要素であるためには、Xのある集合族 Mが存在して、O=∪Mであり、かつ、任意の G∈Mに対して、Nのある 有限部分集合 Fが存在して、G=∩Fであることが必要十分である。 8
さて、本節の最後として、基本的な定理を引用する。(因みに、証明はそ れ程、簡単ではないようである。) 定理46:Eは局所性をもつ可閉な Markov 的対称形式であるとする。 DE⊂C∞(X)であるとする。任意の u∈C∞(X)とε > 0に対して、あ るf∈DEが存在して、supx∈X|u(x)−f(x)|< ε であるとする。任意の f1, f2∈DEに対して、f1f2∈DEであるとする。Xの任意のコンパクト集 合Kと開集合 Gに対して、次が成り立つとする。Gの閉包がコンパクトで あり、K⊂Gであるならば、ある f∈DEが存在して、「任意の x∈X\G に対して、f(x) = 0」であり、「任意の x∈Kに対して、f(x)≥1」である。 このとき、(Eの最小の閉拡大) ¯ Eは局所性をもつ正則 Dirichlet 形式で ある。 証明: 福島の定理2.1.2から、引用した。 ■ 15
3コンパクト化可能な C∞級関数の空間 R∪{∞}をRの1点コンパクト化とし、(R∪{∞})∞を{R∪{∞}}n∈N の直積位相空間とする。本節の目的は、次節で「準備段階の対称形式」の定 義域に採用する空間CF∞({R}k∈N)について、予め調べておくことである。 まず、念のため、CF∞({R}k∈N)の定義を再掲する。 定義47:CF∞({R}k∈N)で、以下の条件を満たす(R∪{∞})∞上の実数 値連続関数fの全体の集合を表す。ある n∈N,g∈C∞(Rn), L∈(0,+∞)が 存在して、 (1) 任意の k∈ {1,2,··· , n}, (x1, x2,··· , xn)∈Rnに対して、 |xk| ≥ L=⇒∂g ∂xk (x1, x2,··· , xn) = 0, (2) 任意の {xl}l∈N∈R∞に対して、 f({xl}l∈N) = g(x1, x2,··· , xn) である。 ■ 命題48:φ∈C∞(R), f ∈CF∞({R}k∈N)とする。このとき、φ◦f∈ CF∞({R}k∈N)であり、任意のk∈N, x ∈R∞に対して、(∂(φ◦f) ∂xk)(x) = (φ′(f(x))) (( ∂f ∂xk)(x)) である。 証明: 容易である。 ■ 「(簡単だが)定義が少し長い対象」に記号を与えることを以下で、しば らく続ける。 定義49:Rを(標準的な計量による)C∞級Riemann多様体とする。R/Z をRから誘導される C∞級Riemann 多様体とする。dR/ZをR/ZのRiemann 計量が定める距離とする。R∪{∞}から R/Zへの写像 Θを、x∈R∪{∞}に対 して、x∈Rであるときは Θ(x) := 1 πarctan(x)、x∈Rでないときは Θ(x) := 1 2+Zで定める。(R∪{∞})2上の [0,+∞)値関数 dR∪{∞} をdR∪{∞}(x1, x2) := dR/Z(Θ(x1),Θ(x2)) で定める。 ■ 補題50:Θは、Rの1点コンパクト化 R∪{∞}から R/Zへの同相写像 である。Θは、Rから (R/Z)\{1 2+Z}への C∞級微分同相を与える。dR∪{∞} は、R∪{∞}上の距離である。dR∪{∞} は、R∪{∞}が持つのと同じ位相を 与える。dR∪{∞} の値域は、[0,1 2]である。 証明: 容易である。 ■ 補題51:任意の{x1,n}n∈N,{x2,n}n∈N∈(R∪{∞})∞に対して、0≤Pn∈N dR∪{∞}(x1,n,x2,n) 2n<+∞である。 証明: 容易である。 ■ 16
補題51より、次のように定義する。 定義52:((R∪ {∞})∞)2上の [0,+∞)値関数 d(R∪{∞})∞をd(R∪{∞})∞ ({x1,n}n∈N,{x2,n}n∈N) := Pn∈N dR∪{∞}(x1,n,x2,n) 2nで定める。 補題53:任意の {x1,n}n∈N,{x2,n}n∈N∈(R∪{∞})∞に対して、d(R∪{∞})∞ ({x1,n}n∈N,{x2,n}n∈N) = Pn∈N min{dR∪{∞}(x1,n,x2,n),1} 2nである。d(R∪{∞})∞は、 (R∪{∞})∞上の距離である。d(R∪{∞})∞から導かれる位相は、{R∪{∞}}n∈N の直積位相である。 証明: 補題25より、容易である。 ■ 定義54:n∈Nに対して、CF∞({(R/Z,1 2+Z)}n k=1)で、以下の条件を 満たす (R/Z)n上の実数値 C∞級関数 Gの全体の集合を表す。ある ε > 0が 存在して、任意の k∈ {1,2,··· , n}, (θ1, θ2,··· , θn)∈(R/Z)nに対して、 dR/Zθk,1 2+Z≤ε=⇒∂G ∂θk (θ1, θ2,··· , θn) = 0 である。 ■ 定義55:CF∞({(R/Z,1 2+Z)}k∈N)で、以下の条件を満たす (R/Z)∞上の 実数値関数Fの全体の集合を表す。あるn∈N,G∈CF∞({(R/Z,1 2+Z)}n k=1) が存在して、任意の{θl}l∈N∈(R/Z)∞に対して、F({θl}l∈N) = G(θ1, θ2,··· , θn) である。 ■ 補題50より、次のように定義する。 定義56:(R/Z)∞上の実数値関数の全体の集合から (R∪{∞})∞上の実 数値関数の全体の集合への写像 Θ∗を、(R/Z)∞上の実数値関数 F,{xk}k∈N∈ (R∪{∞})∞に対して、(Θ∗F)({xk}k∈N) := F({Θ(xk)}k∈N)で定める。(R∪ {∞})∞上の実数値関数の全体の集合から (R/Z)∞上の実数値関数の全体の 集合への写像 (Θ−1)∗を、(R∪{∞})∞上の実数値関数 f,{θk}k∈N∈(R/Z)∞ に対して、((Θ−1)∗f)({θk}k∈N) := f({Θ−1(θk)}k∈N)で定める。 ■ 以上の準備の下で、まず、次の命題57のように、CF∞({R}k∈N)の定義 を少し言い換えることができる。こちらの方が、「直感的な意味合い」がより 明確であろうか、と思われる。 命題57:Θ∗と(Θ−1)∗は、互いに逆写像である。CF∞({R}k∈N) = Θ∗ (CF∞({(R/Z,1 2+Z)}k∈N)) である。 証明: 容易である。 ■ 次の補題58は、特に難しい訳ではないが、本原稿における「技術的な 要」である。 補題58:{ak}k∈N∈(R∪ {∞})∞とし、Kを(R∪ {∞})∞の閉集合と し、{ak}k∈N∈ Kであるとする。このとき、ある f∈CF ∞({R}k∈N)とε > 0 が存在して、任意の x∈(R∪ {∞})∞に対して、0≤f(x)≤1であり、 17
「x∈K⇒f(x) = 0」であり、「d(R∪{∞})∞(x, {ak}k∈N)≤ε⇒f(x) = 1」 である。 証明: K=∅のときは、f:= 1, ε := 1 とおいて容易である。K=∅と する。 δ:= d(R∪{∞})∞({ak}k∈N, K)とおく。0< δ < +∞である。ある N∈Nが 存在して、 1 2N<δ 2である。ε:= min({δ 4N}∪{dR∪{∞}(ak,∞) 2k+2 }k∈{1,2,··· ,N},ak=∞) とおく。0< ε < +∞である。 R/Z上の C∞級関数のある列 {Gk}k∈{1,2,··· ,N}が存在して、任意の k∈ {1,2,··· , N}とθ∈R/Zに対して、0≤Gk(θ)≤1であり、「2k+1ε≤ dR/Z(θ, Θ(ak)) ⇒Gk(θ) = 0」であり、「dR/Z(θ, Θ(ak)) ≤2kε⇒Gk(θ) = 1」 である。(R/Z)N上の実数値関数 Gを、{θk}k∈{1,2,··· ,N}∈(R/Z)Nに対して G({θk}k∈{1,2,··· ,N}) := Qk∈{1,2,··· ,N}Gk(θk)で定める。GはC∞級[0,1] 値関数 である。 ak=∞である任意のk∈ {1,2,··· , N}とθ∈R/Zに対して、「dR/Z(θ, 1 2+ Z)≤2kε⇒Gk(θ) = 1」である。一方、ak=∞である任意の k∈ {1,2,··· , N}とθ∈R/Zに対して、「dR/Z(θ, 1 2+Z)≤2kεであるならば、 2k+2ε≤dR∪{∞}(ak,∞) = dR/Z(Θ(ak),1 2+Z)≤dR/Z(Θ(ak), θ) + dR/Z(θ, 1 2+ Z)≤dR/Z(Θ(ak), θ)+2kεより、2k+1ε≤(2k+2 −2k)ε≤dR/Z(Θ(ak), θ)」 である。よって、ak=∞である任意の k∈ {1,2,··· , N}とθ∈R/Zに 対して、「dR/Z(θ, 1 2+Z)≤2kε⇒Gk(θ)=0」である。以上により、 G∈CF∞({(R/Z,1 2+Z)}N k=1)である。 (R∪ {∞})∞上の [0,1] 値関数 fを、{xk}k∈N∈(R∪ {∞})∞に対して f({xk}k∈N) := G({Θ(xk)}N k=1)で定める。命題57より、f∈CF∞({R}k∈N) である。 任意の x∈Kに対して、f(x) = 0 であることを示す。{xk}k∈N∈Kとす る。このとき、δ≤d(R∪{∞})∞({ak}k∈N,{xk}k∈N) = Pn∈N dR/Z(Θ(an),Θ(xn)) 2n≤ (PN n=1 dR/Z(Θ(an),Θ(xn)) 2n) + δ 2である。2Nε ≤δ 2≤PN n=1 dR/Z(Θ(xn),Θ(an)) 2nであ る。ある k∈ {1,2,··· , N}が存在して、2ε≤dR/Z(Θ(xk),Θ(ak)) 2kである。ある k∈ {1,2,··· , N}が存在して、Gk(Θ(xk)) = 0 である。f({xk}k∈N) = 0 であ る。任意の x∈Kに対して、f(x) = 0 である。 任意の x∈(R∪{∞})∞に対して、「d(R∪{∞})∞(x, {ak}k∈N)≤ε⇒f(x) = 1」であることを示す。{xk}k∈N∈(R∪ {∞})∞とし、d(R∪{∞})∞({xk}k∈N, {ak}k∈N)≤εであるとする。このとき、任意のk∈Nに対して、dR/Z(Θ(xk),Θ(ak)) 2k =dR∪{∞}(xk,ak) 2k≤Pn∈N dR∪{∞}(xn,an) 2n≤εである。任意の k∈ {1,2,··· , N}に 対して、Gk(Θ(xk)) = 1である。f({xk}k∈N) = 1である。「d(R∪{∞})∞(x, {ak}k∈N) ≤ε⇒f(x) = 1」である。 ■ 18
命題59:a, b ∈(R∪{∞})∞とし、a=bであるとする。このとき、あ るf∈CF∞({R}k∈N)が存在して、f(a) = 1, f(b) = 0 である。 証明: 補題58より、容易である。 ■ 命題60:CF∞({R}k∈∞)は、(R∪{∞})∞上の実数値連続関数の全体の実 線形空間(すなわち、通常、C((R∪{∞})∞)と表記される空間)の線形部分 空間である。任意の f1, f2∈CF∞({R}k∈N)に対して、f1f2∈CF∞({R}k∈N) である。1∈CF∞({R}k∈N)である。 証明: 容易である。 ■ 定理61:(R∪{∞})∞上の任意の実数値連続関数 uとε > 0に対して、 ある f∈CF∞({R}k∈N)が存在して、supx∈(R∪{∞})∞|f(x)−u(x)|< ε である。 証明: (R∪{∞})∞は、コンパクトであり、距離付け可能である。よっ て、命題59と命題60から、(Stone-Weierstrass の定理によって)容易で ある。 ■ 命題62:˜µを(R∪{∞})∞(の位相的 σ加法族)上の確率測度とする。 このとき、任意の ψ∈L2(d˜µ)とε > 0に対して、ある f∈CF ∞({R}k∈N)が 存在して、∥f−ψ∥L2(d˜µ)< ε である。 証明: (R∪{∞})∞は、距離付け可能である。よって、命題27より、 ある実数値連続関数 uが存在して、∥u−ψ∥L2(d˜µ)<ε 2である。定理61よ り、ある f∈CF∞({R}k∈N)が存在して、supx∈(R∪{∞})∞|f(x)−u(x)|<ε 2で ある。˜µは確率測度であるので、∥f−ψ∥L2(d˜µ)< ε である。 ■ 補題63:K0, K1を(R∪{∞})∞の閉集合とし、K0∩K1=∅であるとす る。このとき、ある f∈CF∞({R}k∈N)が存在して、任意の x∈(R∪{∞})∞ に対して、「x∈K0⇒f(x) = 0」であり、「x∈K1⇒f(x)≥1」である。 証明: 補題58より、CF∞({R}k∈N)のある族 {fa}a∈K1と(0,+∞)の 族{εa}a∈K1が存在して、任意の a∈K1, x ∈(R∪ {∞})∞に対して、0≤ fa(x)≤1であり、「x∈K0⇒fa(x) = 0」であり、「d(R∪{∞})∞(x, a)≤ εa⇒fa(x) = 1」である。(R∪{∞})∞はコンパクトであるので、K1のあ る有限部分集合 Aが存在して、任意の x∈K1に対して、ある a∈Aが存在 して、d(R∪{∞})∞(x, a)< εaである。f:= Pa∈Afaとおく。 ■ 定理64:K0, K1を(R∪{∞})∞の閉集合とし、K0∩K1=∅であるとす る。このとき、ある f∈CF∞({R}k∈N)が存在して、任意の x∈(R∪{∞})∞ に対して、「0≤f(x)≤1」であり、「x∈K0⇒f(x) = 0」であり、 「x∈K1⇒f(x) = 1」である。 証明: 命題48と補題63より、容易である。 ■ さて、本節の最後として、「CF∞({R}k∈N)を定義域とする(準備段階の) 対称形式」を次節で定義するため、及び、「Gibbs 測度であることは、可閉で あるために十分である」という結果を次節で得るための準備を行う。そのた めの必要な準備に大差はなく、雑に言うと、「CF∞({R}k∈N)の要素は偏微分 19
可能で、CF∞({R}k∈N)は偏微分に関して不変である」という意味合いの簡 単な事実(命題68)を示す。 補題65:任意の n∈N, G ∈CF∞({(R/Z,1 2+Z)}n k=1), k ∈ {1,2,··· , n} に対して、1+cos(2πθk) 2π ∂G ∂θk∈CF∞({(R/Z,1 2+Z)}n k=1)である。 証明: 容易である。 ■ 補題66:任意の F∈CF∞({(R/Z,1 2+Z)}k∈N), k ∈N, x ∈R∞に対し て、∂(Θ∗F) ∂xk(x) = (Θ∗(1+cos(2πθk) 2π ∂F ∂θk))(x)である。 証明: 容易である。 ■ 補題67:任意の f∈CF∞({R}k∈N), k ∈Nに対して、ある fk∈CF∞ ({R}k∈N)が一意に存在して、任意の x∈R∞に対して、 ∂f ∂xk(x) = fk(x)で ある。 証明: R∞は(R∪{∞})∞で稠密であるので、一意である。一方、命題5 7と補題65より、fk:= Θ∗1+cos(2πθk) 2π∂ ∂θk((Θ−1)∗f)∈CF∞({R}k∈N) である。命題57と補題66より、 ∂f ∂xk(x) = fk(x)である。 ■ 命題68:f∈CF∞({R}k∈N), n ∈ {0,1,2,···},(k1, k2,··· , kn)∈Nnと する。このとき、ある fk1,k2,··· ,kn∈CF∞({R}k∈N)が一意に存在して、R∞上 で(Qn l=1 ∂ ∂xkl )f=fk1,k2,··· ,knである。特に、R∞上で (Qn l=1 ∂ ∂xkl )fは有界で ある。 証明: 補題67から、(nに対する帰納法によって、)容易である。 ■ 20
4主結果 (R∪{∞})∞を(前節と同様に、{R∪{∞}}n∈Nの直積位相空間とし、さら に、)直積位相で生成される σ加法族を添えた可測空間とする。同様に、R∞を {R}n∈Nの直積位相空間とし、また、直積位相で生成されるσ加法族を添えた可 測空間とする。(因みに、このとき、命題24より、(R∪{∞})∞とR∞は「位相 で生成されるσ加法族を添えた可測空間」の直積可測空間である。)さらに、本 節では、µを(直積位相で生成される σ加法族を添えた)可測空間 R∞上の 確率測度とし、任意の n∈NとRnの空でない開集合 Gに対して、µ(G×R∞) >0であるとする。また、ここで考えるスピード測度 ˜µを定義71で与える。 補題69:{Yλ}λを位相空間の族とし、{Xλ}λを族とし、任意の λに対し て、XλはYλの空でない部分集合であるとする。このとき、「直積位相で生 成される σ加法族を添えた可測空間 QλYλ」の部分可測空間 QλXλは、「部 分位相空間の族 {Xλ}λの直積位相」で生成される σ加法族を添えた可測空間 QλXλである。 証明: 命題9より、「直積位相で生成される σ加法族を添えた可測空間 QλYλ」の部分可測空間 QλXλは、「直積位相空間 QλYλの部分位相」で生成 される σ加法族を添えた可測空間 QλXλである。一方、命題16より、「直 積位相空間 QλYλの部分位相」は、「部分位相空間の族 {Xλ}λの直積位相」 である。 ■ 補題70:Aを集合とする。このとき、AがR∞の可測集合であるために は、(R∪{∞})∞のある可測集合 Eが存在して、A=E∩(R∞)であること が必要十分である。 証明: 補題69より、容易である。 ■ 補題70より、次のように定義する。 定義71:(R∪{∞})∞の可測集合族上の [0,1] 値関数 ˜µを、(R∪{∞})∞ の可測集合 Eに対して ˜µ(E) := µ(E∩(R∞)) で定める。 命題72:˜µは(R∪{∞})∞(の可測集合族)上の確率測度である。(R∪ {∞})∞の空でない任意の開集合 Gに対して、˜µ(G)>0である。 証明: 確率測度であることは、容易である。Gを(R∪{∞})∞の空で ない開集合とする。このとき、ある n∈NとR∪{∞}の空でない開集合の 列{Gk}n k=1 が存在して、(Qn k=1 Gk)×((R∪{∞})∞)⊂Gである。このとき、 Qn k=1(Gk\{∞})はRnの空でない開集合である。よって、0< µ((Qn k=1(Gk\ {∞})) ×(R∞)) ≤µ(G∩(R∞)) = ˜µ(G)である。 ■ 21
(R∪{∞})∞はコンパクトで、距離付け可能であるから、命題72により、 第2節で引用したDirichlet 形式に関する基本的な事項が(˜µをスピード 測度として)適用できる。 補題73:f∈CF ∞({R}k∈N)とする。このとき、任意の k∈Nに対して、 R∞上で ∂f ∂xkは(存在して、可測であり、)µに関して2乗可積分である。あ るn∈Nが存在して、任意の k∈ {n, n + 1, n + 2,···}に対して、R∞上で ∂f ∂xk= 0 である。 証明: 命題68より、 ∂f ∂xkは(存在して、連続で)有界である。 ■ 補題73より、次のように定義する。 定義74:(CF∞({R}k∈N))2上の実数値関数 Eµ CD を、(f1, f2)∈(CF∞ ({R}k∈N))2に対して Eµ CD(f1, f2) := Pk∈NRR∞ ∂f1 ∂xk ∂f2 ∂xkdµ で定める。 ■ 補題75:Eµ CD は、(スピード測度が ˜µである)対称形式である。 証明: CF∞({R}k∈N)⊂C∞((R∪{∞})∞)⊂L2(d˜µ)と命題62より、 容易である。 ■ 補題76:Eµ CD は、Markov 的である。 証明: 命題48より、容易である。 ■ 補題77:Eµ CD は、局所性をもつ。 証明: 補題37より、容易である。 ■ 定理78:Eµ CD は可閉であるとする。このとき、Eµ CD の最小の閉拡大 ¯ Eµ CD は、(スピード測度が ˜µである)局所性をもつ正則 Dirichlet 形式である。 証明: 定理46、命題60、定理61、定理64、補題75、補題76 と補題77より、容易である。 ■ Gibbs 測度の定義を再掲する。ここで、命題68より、任意の f∈CF∞ ({R}k∈N), k ∈Nに対して、fと同様に R∞上で ∂f ∂xk,∂2f ∂x2 k は有界であることに 注意する。 定義79:µがGibbs 測度であるとは、R∞上の実数値(Borel)可測関 数のある列 {Hk}k∈Nが存在して、任意の k∈Nに対して、次を満たすことを 言う。 (1) 任意の f∈CF∞({R}k∈N)に対して、 ZR∞ Hk ∂f ∂xk 2 dµ < +∞, (2) 任意の f1, f2∈CF∞({R}k∈N)に対して、 ZR∞ ∂ ∂xk∂f1 ∂xk f2dµ = 2 ZR∞ Hk∂f1 ∂xk f2dµ である。 ■ 22
定理80:µはGibbs 測度であるとする。このとき、Eµ CD は可閉である。 Eµ CD の最小の閉拡大 ¯ Eµ CD は、(スピード測度が ˜µである)局所性をもつ正則 Dirichlet 形式である。 証明: 後半は、定理78による。通常の議論により、可閉であることを 示す。{fl}l∈NをCF∞({R}k∈N)の列とし、limn,m Eµ CD(fn−fm, fn−fm) = 0, liml∥fl∥2 L2(d˜µ)= 0 であるとする。 任意の k∈Nに対して、liml∥∂fl ∂xk∥L2(dµ)= 0 であることを示す。L2(dµ) のある列 {wk}k∈Nが一意に存在して、任意の k∈Nに対して、liml∥∂fl ∂xk− wk∥L2(dµ)= 0 である。一方、命題68より、flと同様に、R∞上で ∂fl ∂xk,∂2fl ∂x2 k は (連続で)有界である。よって、Gibbs 測度の定義により、RR∞ ∂fn ∂xk ∂fm ∂xkdµ = −RR∞ ∂2fn ∂x2 kfmdµ + 2 RR∞(Hk∂fn ∂xk)fmdµ であり、fl↾R∞,∂fl ∂xk,∂2fl ∂x2 k∈L2(dµ)であ る。Gibbs測度の定義により、さらに、Hk∂fl ∂xk∈L2(dµ)でもあるので、⟨∂fn ∂xk,∂fm ∂xk⟩L2(dµ) =−⟨∂2fn ∂x2 k, fm↾R∞⟩L2(dµ)+2⟨Hk∂fn ∂xk, fm↾R∞⟩L2(dµ)である。さらに、liml∥fl↾R∞∥L2(dµ) = 0でもあるので、⟨wk, wk⟩L2(dµ)= limn(⟨∂fn ∂xk, wk⟩L2(dµ)) = limn(limm(⟨∂fn ∂xk,∂fm ∂xk⟩L2(dµ))) = limn(limm(−⟨∂2fn ∂x2 k, fm↾R∞⟩L2(dµ)+2⟨Hk∂fn ∂xk, fm↾R∞⟩L2(dµ))) = limn(−⟨∂2fn ∂x2 k,0⟩L2(dµ) +2⟨Hk∂fn ∂xk,0⟩L2(dµ)) = 0 である。以上より、liml∥∂fl ∂xk∥L2(dµ)= 0 である。 limlEµ CD(fl, fl) = 0であることを示す。ε > 0とする。あるN∈Nが存在し て、任意のn, mに対して、「n≥N, m ≥N⇒Eµ CD(fn−fm, fn−fm)<ε 2」で ある。任意のK, n, mに対して、「n≥N, m ≥N⇒PK k=1 ∥∂fn ∂xk−∂fm ∂xk∥2 L2(dµ)< ε 2」である。任意の K, n に対して、「n≥N⇒PK k=1 ∥∂fn ∂xk∥2 L2(dµ)≤ε 2」であ る。任意の nに対して、「n≥N⇒Eµ CD(fn, fn)≤ε 2< ε」である。 ■ 感想:(0,1)∞のように完備でない Riemann 多様体の加算直積の場合に より顕著か、と思われるが、対称 Hunt 過程としては反射壁よりも吸収壁の 方がより存在し難い、ということであるのかもしれない。一つの解釈として、 加算直積の場合には、理想境界が稠密であるため、吸収壁過程を構成すると 「即死過程が得られてしまうことがある」ということであるのかもしれない。 ■ 感想:例えば、Dを2次元の単位開円板とし、直和 D⊔Dを基礎の状態 空間とすると、その自然な拡張(による正則化)は様々であると思われる。 但し、恐らく、基礎空間が局所コンパクトの場合には、基礎空間が拡張の開 集合となって、(何らかの適当な条件の下で、福島の第6.3節の一般化が 成立して、)基礎空間上での吸収壁過程は拡張に依らないのであろう。無限 次元の場合も、拡張による正則化から得られる基礎空間上での吸収壁過程は 拡張に依らないか、どうか?、という問題が考えられるのかもしれない。 ■ 23 View publication statsView publication stats